2013年7月13日土曜日

北越雪譜 初編 巻之上 1.1.07.雪の堆量 (ゆきのたかさ)

1.1.07.雪の堆量 (ゆきのたかさ)

余が隣宿 (りんしゅく) 六日町の俳友、天吉老人の話に、妻有庄 (つまありのしょう) にあそびし頃聞きしに、千隈 (ちくま) 川の (ほとり) () 人、初雪 (しょせつ) より [天保五年をいう] 十二月二十五日までの間、雪の (くだ) る毎に、用意したる所の雪を尺をもって量りしに、雪の高さ十八丈ありしといえりとぞ。

此の話、雪国の人すら信じがたくおもえども、つらつら思量 (おもいはかる) に、十月の初雪より十二月二十五日まで、およその日数 (ひかず) 八十日の間に、五尺づつの雪ならば二十四丈にいたるべし。随って (ふれ) ば随って (はら) う処は積んで見る事なし。又、地にあれば減りもする也。かれをもって是をおもえば、我が国の深山幽谷 (しんざんゆうこく) 雪の深き事、はかりしるべからず。天保五年は我が国近年の大雪なりしゆえ、右の話、 () うべからず。



参照リンク:
私の北越雪譜 雪の積もる量



単純翻刻


○雪の堆量(たかさ)

余(よ)が隣宿(りんしゆく)六日町の俳友天吉老人の話(はなし)に妻有庄(つまありのしやう)にあそびし頃聞(ころきゝ)しに千隈(ちくま)川の辺(ほとり)の雅(が)人初雪(しよせつ)より [天保五年をいふ] 十二月廿五日までの間(あひだ)雪の下(くだ)る毎(ごと)に用意したる所の雪を尺(しやく)をもつて量(はか)りしに雪の高(たか)さ十八丈ありしといへりとぞ此話(このはなし)雪国の人すら信(しん)じがたくおもへどもつら/\思量(おもひはかる)に十月の初雪より十二月廿五日までおよその日数(ひかず)八十日の間(あひだ)に五尺づゝの雪ならば廿四丈にいたるべし随(したがつ)て下(ふれ)ば随(したがつ)て掃(はら)ふ処(ところ)は積(つん)で見る事なし又地にあれば減(へり)もする也かれをもつて是をおもへば我国の深山幽谷(しんざんいうこく)雪の深(ふかき)事はかりしるべからず天保五年は我国近年の大雪なりしゆゑ右の話誣(はなしし)ふべからず

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